第一章

サキヤ一族の始まりから誕生、出家まで





サキヤ族の始まり

イッチャーナンガラの森で、アムパッタ青年に向かって
アムバッタスッタ・長部シーラカンダヴァッガ 9巻120頁149項

 アムバッタさん。大昔の話です。ウッカーラージャ王は寵愛していた妃の子に王の財産を譲ろうと考え、年上の王子、つまりウッカームッカ王子、カラカンドゥ王子、ハッティニーカ王子、シニープラ王子の四王子を領地から出し、ヒムマパンダ(ヒマラヤ)山腹にある蓮池に近い大きなサーカの森に住まわせました。王子たちは他の血が混じるのを恐れて、自分たちの姉妹と結婚しました。

 その後ウッカーラージャ王が「四人の王子は今何処にいるのだ」と大臣に尋ねると、大臣は「現在四人の王子様はヒムマパンダ山腹にある蓮池に近い大きなサーカの森にお住まいです。王子様たちは他の血が混じるのを恐れて、自分の姉妹と夫婦になっていらっしゃいます」と申し上げました。

 その時ウッカーラージャ王は「王子は勇敢だなあ。王子は実に勇敢だ」と感嘆しました。それが初めでサキヤと呼ばれる一族になりました。





サキヤ族はコーサラ王の傘下

長部パーピヴァッガ 11巻91頁54項

 ヴァーセッタさん。コーサラ国のパセンディ王は、当然「ゴータマサマナは素晴らしい人で、サキヤ一族から出家した」と知っています。ヴァーセッタさん。というのはサキヤ族は近しい人で、そしてパセンディコーサラ王の傘下にあったからです。

 ヴァーセッダさん。サキヤ一族の人がパセンディコーサラ王を持て成したように、パセンディコーサラ王も当然如行(ブッダの一人称。そのように行ったという意味。漢訳では如来)を持て成します。

註: ほとんどの人はブッダの家系がどこかの属国であったと信じたがりませんが、ブッダご自身が、サキヤ一族はコーサラの配下にあったのでパセンディ王に拝礼しなければならなかったと話されています。しかし出家してブッダになられた後は、反対に、かつてサキヤ族がパセンディコーサラ王に拝礼したように、パセンディコーサラ王がブッダに拝礼しました。





サキヤ王国はコーサラ王国次第

パッバチャースッタ
小部スッタニパーダ 25巻407頁354項
(ピンピサラ王に答えて)

 王。財産を求める道具である努力が完璧なヒマバンタ(ヒマラヤ)山腹にある田舎はコーサラの属国で、氏はアーディタヤ、生まれはサキヤの一族がいます。私がその家系から出家したのはカーマ(愛欲)を求めてではありません。



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 以下八話については、「挨拶」の頁の「第二版の解説」の真ん中辺に、ターン・プッタタートの見解が述べられているので、誤解を防ぐために是非お読みになるようお勧めします。訳者

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兜率天レベルの天人群の生活 

アッチャリヤアバブータダンマスッタ(稀有未曽有法経)
中部ウパリパンナーサ 14巻247頁360項

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタ(大悟する前、王子だった頃のブッダの一人称。菩薩)は、兜率天の天人群の中に生まれたと、すべてを知るサティがありました」と、このように世尊だけから聞き、世尊から聞いたことだけを記憶しています。猊下。ボーディサッタに兜率天の天人群に生まれたと完璧に知るサティがあったのは、当然世尊に関して今までなかった不思議なことと見なしております。

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタは兜率天レベルの天人群の中で生きていたと、完璧に気づくサティがありました」と、このように世尊だけから聞き、世尊から聞いたことだけを記憶しています。猊下。ボーディサッタに、兜率天の天人群の中で生きたと、すべてに気づくサティがあったのは、当然世尊に関して今までなかった不思議なことと見なしております。

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタは、兜率天レベルの天人群の中で寿命まで生きていたと、完璧に自覚するサティがありました」と、このように世尊だけから聞き、世尊から聞いたことだけを記憶しています。ボーディサッタに、兜率天の天人群の中で寿命まで生きたと完璧に自覚するサティがあったのは、当然世尊に関して今までなかった不思議なことと見なしております。

註: 兜率天にいる話、死の話、生まれる話などに関したパーリ・アッチャリヤアバブータダンマスッタ(稀有未曽有法経)は奇跡の話ばかりです。すべて文字通りに捉えるべき話なのか、それともプッガラーティサターナ(人物について話す話法)に隠されたので、もう一段階判断しなければならないのか、編者である私は、自分で述べずに確認者であるアーナンダに語らせている部分にこれらの奇妙な点を観察します。

 どうぞ判断して見てください。本書に収めたのは、間接的ではあっても、プラアーナンダの口を通していてもパーリ(ブッダの言葉)にあるブッダバーシタに違いないからです。このようなのは、ここにしか見られません。





兜率天から胎内に生まれる

アッチャリヤアバブータダンマスッタ
中部ウパリパンナーサ 14巻248頁363項

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタは兜率天の天人群から母の胎内に生まれたと完璧に気づくサティがありました」と、このように世尊だけから聞き、世尊から聞いたことだけを記憶しています。私はこれも、世尊に関して今までなかった不思議なことと見なしております。





兜率天から生まれたことで光が生じた

アッチャリヤアバブータダンマスッタ
増支部チャトゥカニバータ 21巻176頁127項

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが兜率天の天人の群から母の胎内に下りて行った時、すべての天人が生じさせるよりも偉大な光、無限の光が生じ、天人界と悪魔界と梵天界、サマナ・バラモンと天人と人間も含めた動物群、地獄界にまでこの光が現れました。

 広大で遮る物がなくても、暗闇で視識を生じさせることができず、このように威力のあるお月様とお日様の光も届かない地獄界にも、無限に偉大な光、すべての天人が生じさせる光より威力のある光が現れました。

 そこに生まれた動物は、その光によって互いに知ることができ、『発展した方々、ここに生まれた人は、私たち以外にもいます』と叫び、そして万の世界は動揺し、震撼し、偉大で無限な光が世界に現れたと完璧に知るサティがありました」と、このように世尊だけから聞き、世尊から聞いたことだけを記憶しています。私はこれも世尊に関して今までなかった不思議なことと見なしております。 

註:このような内容はブッダバーシタ(仏説)の形、つまりパーリ・サッタマスッタにもあります。





誕生による地震

ヴェーサリー国パーヴァーラチェディーで
増支部アッダカニバータ 23巻322頁167項

 アーナンダ。大きな地震を生じさせる原因と縁は八つあります。

 アーナンダ。ボーディサッタが兜率天から母の胎内に生まれた自覚があった時、その時当然地面が揺れ、震え、振動しました。アーナンダ。これが大地震が現れる三つ目の原因と縁です。





胎内へ

アッチャリヤアバブータダンマスッタ
中部ウパリパンナーサ 14巻249頁365項

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内に下りて行った時、人間や非人間の誰でも、ボーディサッタやボーディサッタの母に危害を加えないように、当然天人の男性たちが、四方からボーディサッタを護衛しました」と、このように世尊だけから聞き、世尊から聞いたことだけを記憶しています。

 猊下。私はこれも、世尊に関して今までなかった不思議なことと見なしております。





胎内の生活

アッチャリヤアバブータダンマスッタ
中部ウパリパンナーサ 14巻249頁366項

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内に下りて行った時、ボーディサッタの母は当然平素から戒があり、殺生を避け、盗みを避け、邪婬を避け、虚言を避け、不注意の元である飲酒や麻薬を避けていました」と、このように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内に降りて行った時、ボーディサッタの母は当然誰に対しても五欲の混じった考えがなく、更にボーディサッタの母に欲情して侵害しようと考える人もいませんでした」と、このように世尊から聞き、世尊から聞いたことだけを記憶しています。

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内に降りて行った時、ボーディサッタの母は五欲に恵まれた人でした。ボーディサッタの母は五欲で満たされ、大切に守られていました」と、このように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内に降りて行った時、ボーディサッタの母は当然何の病もなく、幸福で疲れを知りませんでした。ボーディサッタの母は胎内にいるボーディサッタの姿を見ることができ、心身の各部分が整った健康な体が見えました。

 美しく磨かれた猫目石の中に緑色や黄緑や赤、白、あるいは黄色などの糸が浮いていて、目の良い人がその石を掌に載せれば、これは美しく磨かれた猫目石で、これは緑色や黄緑や、赤、白、あるいは黄色などの糸だと分かるように、ボーディサッタの母に病がなく、健やかで疲れを知らない様子はこのようであり、そして母の胎内に座っている、すべての部分が満足で、良い根があるボーディサッタを見ることができました」と、このように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。

 猊下。私は「アーナンダ。他の女性は九か月、乃至十か月孕んで子を産みますが、ボーディサッタの母はそのようでなく、丸々十か月胎内に抱えて出産しました」とこのように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。これらのことは、世尊に関して今までなかった、不思議なことと見なしております。





誕生

アッチャリヤアバブータダンマスッタ
中部ウパリパンナーサ 14巻251頁372項

 猊下。私は「アーナンダ。他の女性は座って出産したり寝て出産したりしますが、ボーディサッタの母はそうではなく、ボーディサッタの母は当然立って出産しました」とこのように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内から出る時、その時天人がすべての人間より先に後ろから受けとめました」とこのように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内から出て、まだ地面に着かないうちに、四人の天人が受け止めて母の前に置き、『母君様。ご満足なさいませ。偉大な権力のある若君様です』と言いました」とこのように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内から出てきた時粘液で汚れず、痰で汚れず、血で汚れず、膿で汚れず、あらゆる不潔なもので汚れていない清潔清浄な人でした。カーシー産のすべすべした布の上に置いた宝石はどんな原因でも布を汚さず、布も宝石を汚さないのは、どちらも清潔で清浄だからのように、

ボーディサッタが母の胎内から出て来た時も、粘液で汚れず、痰で汚れず、血液で汚れず、膿で汚れず、どんな不潔なものでも汚れていない実に清潔清浄な子でした」とこのように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内から出る時、ボーディサッタと母に、人が水仕事に使う二つの流れが空から現れました。一つは冷たく、一つは熱いものでした」とこのように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。

 猊下。私は「アーナンダ。このように生まれると、ボーディサッタは平らな足の裏で地面を踏みしめ、北に向かって七歩歩き、上は白い傘で遮られ、当然すべての方向を見回して『私は世界で最高に偉大な人であり、世界で一番発展した人であり、世界で最も徳行の高い人です。この生は最後の生であり、今、新たな有は当然ありません』と宣言しました」とこのように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことを記憶しています。





生誕によって光が生じた

アッチャリヤアバブータダンマスッタ
中部マッジマパンナーサ 14巻176頁127項

 猊下。私は「アーナンダ。ボーディサッタが母の胎内から生まれた時、偉大で無限の光、すべての天人が生じさせるよりも偉大な光が、天人界・悪魔界・梵天界と、動物群のサマナ・バラモン、天人と人間に現れました。広大で遮る物がなくても、暗闇で視識が生じることがなく、お月様とお日様の偉大な光もそこには届かない地獄界にも、無限で偉大な光、すべての天人が生じさせるより偉大な光は届きます。

 そこに生まれた動物は、その光によって知ることができ、『発展した方々。ここには私以外の人も生まれています』とこのように叫び、そして万の世界も動揺し、振動し、震え、すべての天人が生じさせる光より無限に偉大な光が、世界に生じました」と、このように世尊からだけ聞き、世尊からだけ聞いたことだけを記憶しています。

 これらは世尊に関して今までなかった不可思議なことと見なしております。

訳注: 以上の八話については「挨拶」の頁の「第二版解説」に詳しい説明があります。


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誕生に伴う地震

増支部アッダカニバータ 23巻323頁167項

 アーナンダ。大地震を現わす原因と縁は八つあります。

 アーナンダ。ボーディサッタに、母の胎内から出る自覚があった時、当然地面は揺れ、振動し、動揺しました。これが、大地震が現れる三つ目の原因と縁です。




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