序章

ブッダの伝記に関心をもつための話






一つの世界にブッダは一人

ブッタートゥカスッタ
 中部ウパリパンナーサ 14巻171頁245項

 アーナンダ。道理と非道理に賢い比丘は、当然これは道理がない、これはあり得ないと知っています。一つの世界に阿羅漢サンマーサンブッダである如行(註)は一人しかいません。前後しないで二人同時に生まれることはあり得ません。

 あり得るのは、一つの世界に一人の阿羅漢サンマーサンブッダである如行がいることです。これはあり得ます。

註: そのように行くという意味のブッダの一人称。漢訳では如来。





如行が世界に現れるのは非常に稀

増支部エカニバータ 20巻29頁141項

 比丘のみなさん。(重複する人がいない)一番の人が世界に現れるのは非常に有り難いことです。一番の人とは誰でしょうか。自分で正しく悟った阿羅漢である如行が一番の人です。一番の人が世界に現れるのは、非常に有り難いことです。





陶酔している世界も如行のダンマに関心がある 

祇園精舎で
増支部チャトゥカニバータ 21巻177頁128項

 比丘のみなさん。阿羅漢サンマーサンブッダである如行が生まれたので、今までなかった四つの不思議なことが現れました。四つとは何でしょうか。

1.比丘のみなさん。すべての庶民は五欲に満足し、五欲を喜び、五欲を楽しんでいますが、如行が五欲に関わらないダンマを説くと、それらの庶民も聞き、耳を掘って聞き、すべてを理解しようとしっかり聞きます。比丘のみなさん。これがサンマーサンブッダである如行が生まれたことで生じた、今までになかった不思議なことの一つです。

2.比丘のみなさん。すべての庶民は高慢に満足し、高慢を喜び、高慢を楽しんでいますが、如行が高慢を無くすダンマを説くと、それらの庶民も聞き、すべてを理解しようと耳を掘って聞き、しっかり聞きます。これがサンマーサンブッダが生まれたことで生じた、今までになかった不思議なことの二つ目です。

3.比丘のみなさん。すべての庶民は静かでない大騒ぎに満足し、静かでない大騒ぎを喜び、静かでない大騒ぎを楽しんでいますが、如行が静かでない大騒ぎを無くすダンマを説くと、それらの庶民も聞き、すべてを理解しようと耳を掘って聞き、しっかりと聞きます。これがサンマーサンブッダが生まれたことで生じた、今までになかった不思議なことの三つ目です。

4.比丘のみなさん。すべての庶民は無明があり、盲人であり、闇に覆われていますが、如行が無明を無くするダンマを説くと、それらの庶民も聞き、すべてを理解しようと耳を掘って聞き、しっかりと聞きます。これが、サンマーサンブッダが生まれたことで生じた、今までになかった不思議なことの四つ目です。





世界に如行のダンマがあることは世界の幸福

増支部チャトゥカニバータ 21巻197頁160項

 比丘のみなさん。プラスガタでもプラスガタの規律でも世界にある間は、それは非常に多くの人を援けるため、非常に多くの人の幸福のため、世界を救うため、すべての天人と人間の利益のため、幸福のため、支援のためになります。

 比丘のみなさん。プラスガタとは誰でしょうか。それは自分で正しく悟った阿羅漢サンマーサンブッダとしてこの世界に生まれ、知識と行動が完璧で、(向こう岸へ)良く(ス)行った(ガタ)人であり、世界を明らかに知り、訓練するべき人を誰よりも良く訓練する御者であり、天人と人間の先生であり、明るい人であり、ダンマを分類して動物に教えた人である如行。これがプラスガタです。

 比丘のみなさん。プラスガタの規律とは何でしょうか。それは、如行は初めも中間も終わりも美しく、道理も言葉も純潔で完璧なダンマを説き、梵行を公開しました。如行が説いたダンマ、如行が公開した梵行がプラスガタの規律です。

 比丘のみなさん。プラスガタでも、プラスガタの規律でも、世界にある間は、それは非常に多くの人を援けるため、非常に多くの人の幸福のため、世界を救うため、すべての天人と人間の利益と幸福の支援になります。





世界の幸福のために如行は生まれた 

祇園精舎で
中部マッジマパンナーサ 12巻37頁46項

バラモンさん。サマナ・バラモンのある人たちは真夜中を日中と理解し、日中を夜中(註)と理解します。私は、これらのサマナ・バラモンは迷いで生きていると言います。バラモンさん。如行は当然夜中を夜中と、日中を日中と理解します。

 バラモンさん。誰かを「正常で迷っていない動物であり、非常にたくさんの人を援けるため、非常にたくさんの人の幸福のため、世界を救うため、天人とすべての人間の利益と幸福の支援になるために生まれた動物」と正しく呼ぶなら、その人はこの私を、正常で迷っていない動物であり、非常にたくさんの人を援けるため、非常にたくさんの人の幸福のため、世界を救うため、天人とすべての人間の利益と幸福の支援になるために生まれた動物と正しく呼ぶべきです。

註: ここで「夜中を日中と、日中を夜中と」というのは文字通りの意味ではありません。





如行が世界に生まれたのは素晴らしい生き方の手本を説くため

祇園精舎で
中部マッジマパンナーサ 12巻489頁454項

 比丘のみなさん。如行は知識と品行が完璧で、良く行った人であり、世界を明らかに知り、訓練するべき人を誰よりも良く訓練する御者であり、天人と人間の先生であり、明るい人であり、ダンマを分類して動物に教える人としてこの世界に生まれました。

 比丘のみなさん。如行は最高の智慧でこの世界と天人、悪魔、梵天の世界を明らかにし、サマナ・バラモン、天人と人間の動物群を明らかにし、他の人が知ることができるよう公開しました。如行は初めも中間も終わりも美しいダンマ、道理も言葉も純潔で完璧なダンマを説き、梵行を公開しました。

 長者、あるいは長者の子息、あるいは他の家系にこれから生まれて来る人も、当然そのダンマを聞き、聞けば如行に信仰が生じて信仰のある人になり、当然「在家は埃が来る道。出家はすっきりする好機。このように所帯を持っている私が清潔に磨いている僧のように純潔で完璧な梵行をするのは簡単ではない。それなら髪と髭を下ろして渋染めの布をまとい、家から出て家のない人になろう」と熟慮して見ます。





如行が生まれて鎮静、消滅、知るためのダンマを説く

ラージャガハに近いマンゴー園で
増支部アッダカニバータ 23巻229頁119項

 比丘のみなさん。如行は知識と行動が完璧で、良く行った人であり、世界を明らかに知り、訓練するべき人を誰よりも良く訓練する御者であり、天人と人間の先生であり、明るい人であり、ダンマを分類して動物に教える人としてこの世界に生まれました。

 如行が説くダンマは静まるダンマ、完璧に消滅するダンマ、すべてを知るダンマ、プラスガタによって公開されたダンマです。





三つの自然が世界に如行を生まれさせた

増支部ダサカニバータ 24巻154頁76項

 比丘のみなさん。世界にこの三つの自然がなければ如行は阿羅漢サンマーサンブッダとして世界に生まれる必要がなく、そして如行が公開したダンマヴィナヤも世界に繁栄する必要はありません。その三つの自然とは何でしょうか。

 それは生も老いも死もです。比丘のみなさん。世界にこの三つの自然がなければ、如行は阿羅漢サンマーサンブッダとして世界に生まれる必要がなく、そして如行が公開したダンマヴィナヤも世界で繁栄する必要もありません。

 比丘のみなさん。世界にこの三つの自然があるから、だから如行は阿羅漢サンマーサンブッダとして世界に生まれなければならず、そして如行が公開したダンマヴィナヤも世界で繁栄しなければなりません。




如行に聞き従う人は永遠に幸福になる

ウッカヴェーラーに近いガンジス川岸で
中部マッジマパンナーサ 12巻421頁391項

 比丘のみなさん。私はこの世界に賢く、他の世界に賢く、悪魔の住処である輪廻に賢く、悪魔の住処でない輪廻に賢く、魔王の住処である輪廻に賢く、魔王の住処でない輪廻に賢い人です。この話は聞くべきだ、信じるべきだと考える人には利益があり、永遠に幸福のためになります。

 (世尊はこのように話された後、プラスガタは次のように言われました)。

 この世界と別の世界を、如行は知り尽くして明らかに公開しました。悪魔が行けない場所、魔王が行けない場所も如行は明らかに知って理解し、明らかに公開しました。如行はすべての世界を知ったので、すべての動物が安全な場所(涅槃)に到達するために不死の門を開け、罪のある悪魔の流れを塞ぎいで無くし、毒を無くしました。

 比丘のみなさん。素晴らしい努力から生じた安全なダンマを望む、喜びの多い人になりなさい。




ブッダと名乗る

ドナバラモンとの会話
道中の木の下で
増支部チャトゥッカニバータ 21巻49頁36項

 「発展なさった方。あなたは天人ですか」。

 バラモンさん。私は天人ではありませんよ。

 「発展なさった方。あなたはガンダッバ(音楽神)ですか」。

 バラモンさん。私はガンダッバではありませんよ。

 「発展なさった方。あなたは鬼ですか」。

 バラモンさん。私は鬼ではありませんよ。

 「発展なさった方。あなたは人間ですか」。

 バラモンさん。私は人間ではありませんよ。

 「発展なさった方。私がどのように質問しても、あなたは違うとお答えになる。それならあなたは何なのですか」。

 バラモンさん。まだ捨てられなければ私を天人にする漏のどれも、私はそれらの漏を捨てて無くしてしまい、根こそぎ抜いて、二度と芽が出ない先端を切った砂糖ヤシの木のようにしました。バラモンさん。まだ捨てられなければ私をガンダッパにし、鬼にし、人間にする漏のどれも、それらの漏を私は捨てて無くし、根こそぎ抜きとり、二度と芽が出ない先端を切った砂糖ヤシの木のようにしました。

 バラモンさん。緑の蓮、桃色の蓮、あるいは白い蓮は水中で生まれ水中で育ちますが、水を突き抜けて立っていて濡れていないように、バラモンさん。私はこの世界に生まれてこの世界で育ったことは事実ですが、世界を支配し、世界を見ていても、世界で汚れることはありません。

 バラモンさん。私を「ブッダ」と憶えておきなさい。





初めに知るべき概要

小部ブッダヴァッガ 33巻543頁26項

 「ゴータマ氏の人である私はサキヤ一族の中で育ち、努力して、今最高のサンマーサンボディニャーナ(正菩提智)に到達してサンマーサンブッダになりました。

 私の都はカビラバスツと言い、父の名はスドーダナ、生母の名はマーヤーと言い、私は二十九年家を治め、スジャンダ、コカヌダ、コンチャという三つの最高の城があり、四万人の美しく着飾った女性とヤソーダラーという妃とラフラという子がいました。

 四つのニミッタ(この場合は情景)を見た後、馬に乗って(城を)出て六年努力し、誰もできないことをしました。私は勝者になりバラーナシー国のイジパタナの森でダンマチャクラ(ダンマの車輪。法輪)を公開し、ゴータマという名のサンマーサンブッダになり、すべての動物の拠り所になりました。

 比丘である二人の筆頭弟子はコーリタ(モッガラーナ)とウパティッサ(サーリプッタ)、身近な支援者はアーナンダ、比丘尼である二人の筆頭弟子はチッタとハッターラヴァカ、清信女である筆頭支援者二人はナンダマーターとウッタラーです。私は菩提樹の木陰で最高のサンマーボーディニャーナ(正菩提智)に到達しました。





初めに知っておくべきこと Ⅱ

祇園精舎で
長部マハーヴァッガ 10巻2頁1項

 比丘のみなさん。この賢劫に阿羅漢サンマーサンブッダである私が世界に生まれました。

 比丘のみなさん。今阿羅漢サンマーサンブッダである私は、素性はカッティヤ(武士階級)でカッティヤの家系に生まれました。

 比丘のみなさん。今阿羅漢サンマーサンブッダである私の氏はゴータマです。

 比丘のみなさん。今(時代の動物である)私たちの寿命はとても短く、最高に長い人でもたった百歳で百歳を越える人は非常に稀です。

 比丘のみなさん。今、阿羅漢サンマーサンブッダはアッサッタ(菩提樹。註)の木陰で悟りました。

 比丘のみなさん。今、サーリプッタとモッガラーナという二人の弟子が私の筆頭弟子です。

 比丘のみなさん。今、私の弟子たちが一度だけ、そして千二百五十人が集合したことがあります。この時集まった弟子は阿羅漢キーナーサヴァばかりです。

 比丘のみなさん。今、私の身近で支援する比丘アーナンダは素晴らしい支援をしています。

 比丘のみなさん。今、ストーダナという名の王は私の父で、マーヤーという名の妃は私の生母で、カビラバスツという名の都は(私の父の)都です。

註: 現在、ブッダが悟られたという理由で菩提樹と呼ばれている、Ficus religiosa と呼ぶ木は、その地で従来アッサッタと呼ばれていました。どんな種類の木でも、どのブッダが悟る木として使っても、その種の木を、そのブッダの時代は菩提樹と呼びます。今のブッダの時代は、桑科の一種であるアッサッタの木を菩提樹と呼びます。




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